Netflixリミテッドシリーズ『ザ・ガーデナー』レビュー| 作品情報、あらすじ、登場人物とキャスト紹介、ネタバレあり

Netflix配信中の話題作『ザ・ガーデナー』
この記事では、作品情報、あらすじ、登場人物、キャスト、そしてストーリーの詳細を徹底解説します!

【ネタバレ注意】
この記事には『ザ・ガーデナー』のストーリーに関するネタバレが含まれています。
未視聴の方は注意ください。

目次

『ザ・ガーデナー』作品情報

  • 原題: El Jardinero
  • ジャンル: サスペンス、ヒューマンドラマ
  • 制作: スペイン
  • 公開: 2025年
  • 全エピソード数: 6話
  • 配信プラットフォーム: Netflix
  • 日本語吹き替え: 無し※

※2025年4月時点の情報です

『ザ・ガーデナー』あらすじ

6歳の時、交通事故に遭い感情を失った青年エルマー。母親チナはエルマーに感情がないことを利用し、彼を冷酷な殺し屋として仕立て上げた。
エルマーが次なる標的として殺害を命じられたのは保育士のビオレタ。いつもなら標的と接触することなく任務を遂行するエルマーだが、ある日突然体調を崩し、倒れてしまう。偶然にも彼を助けたのは、標的であるビオレタだった。
エルマーの身体に起きている異変は、彼に感情が再び芽生え始めているサインだった。感情を取り戻した彼は、ビオレタと接触を重ねるうちに彼女に惹かれ、恋に落ちていく。
冷酷な殺し屋が初めて知る「愛」と「葛藤」の物語が、今始まる。

『ザ・ガーデナー』登場人物とキャスト

エルマー・フラド

演:アルバロ・リコ

主人公。表の顔は庭師、そして殺し屋としての裏の顔を持つ。
6歳の時の交通事故で右前頭葉皮質に損傷を負い、感情を失っている。

ラ・チーナ(チナ)・フラド

演:セシリア・スアレス

エルマーの母親。元女優で、現在はエルマーの庭園に隣接する園芸店を営む一方で、裏では殺しの依頼を取り仕切る。
実際に手を下すのは息子エルマーだが、依頼の受付から報酬の授受まで、すべてを掌握している。
過去の事故で右足を失い、現在は義足で生活している。

さらに詳しく

20年前、当時恋人でマネージャーだったトニーに裏切られ、エルマーを車の後部座席に乗せ、夜道を泣きながら運転していた。シートベルトを嫌がるエルマーをなだめようと後部座席を振り向き、車は道を外れ木に激突した。その事故が原因でエルマーは感情を失い、自身は右足を失った。
殺し屋業を営む目的はお金であり、母親と昔一緒に住んでいたメキシコの家を買い戻し、エルマーを連れその家で暮らすという目的を持つ。

ビオレタ

演:カタリナ・ソペラナ

幼稚園の先生。ミルキーという名前の犬を飼っている。
両親は彼女が幼い頃に交通事故で他界している。

サベラ・コスティラ

演:エマ・スアレス

過去に息子のソアンを亡くしている。
ビオレタがソアンの死に関与していると見て、彼女の殺害をチナに依頼する。

ソアン・コスティラ

演:ハビエル・モルガデ

サベラの息子。過去にビオレタと付き合っていた。
物語が始まる数か月前に橋から転落し死亡している。

トーレス

演:フランシス・ロレンソ

失踪課の刑事。

カレラ

演:マリア・バスケス

失踪課の刑事でトーレスの相棒。

カトゥシャ

演:イサベル・ガリード

ビオレタの友人。

アントニオ(トニー)・ベロカル

演:イバン・マサゲ

チナの女優時代の恋人でマネージャー。

モン

演:ビクトル・カスティージャ

ソアンの友人。

『ザ・ガーデナー』エピソードリストとストーリー

【ネタバレ注意】

【ネタバレ注意】

1. 大西洋岸の庭

庭師という表の顔の裏で殺し屋として活動するエルマーは、何か悩みを抱えているらしい若い女性ビオレタの殺害を命じられる。一方、警察は殺人事件の匂いを嗅ぎつける。

海岸で人目につかず男性を毒殺する青年エルマー。彼は殺害した男性を車に乗せ、庭園の土の中に埋める。そして任務が完了したことを母チナに報告した。

エルマーの表の顔は庭師。彼の庭の美しさの秘訣は肥料にあった。死んだあとの人体には多くの無機物が残り、植物の栄養となる。死体は植物にとって最高の肥料なのだ。

エルマーが殺害したのは水泳選手アントン・マルティン。彼の失踪事件を追う刑事トーレスとカレラは、海岸で手掛かりを探していた。そこに現れたアントンの妻は、いつも夫が夕方に海で泳いでいたと証言し、その後チナの営む園芸店を訪れ、チナに人目を避けて小包を手渡す。チナは彼女に「もう夫を恐れる必要はない」と告げる。彼女の子どもの目には殴られたようなあざがあった。

その後、チナの元には新たな依頼人サベラが現れる。彼女は息子ソアンの死に関与したとして、ビオレタという女性の殺害を依頼。チナはこれが最後の仕事だと言い、エルマーにビオレタの殺害を命じる。

だが、エルマーの身体には異変が起き始めていた。庭園コンテストの審査中に体調を崩し、街の中で倒れてしまう。彼を助けたのは、次の標的であるビオレタだった。エルマーに起きた異変は、彼に再び感情が芽生え始めたサインだった。帰宅後、母チナと映画を見ている最中、エルマーは感情が溢れ涙が流れそうになる自分に気付く。

コンテスト授賞式で表彰されるエルマーのもとにビオレタが現れ、彼女と楽しそうに会話する姿を見たチナは、エルマーに標的と接触する危険性を警告し、改めて彼女の殺害を命じる。

エルマーは殺害を実行するため、ビオレタが犬のミルキーと散歩する森へ先回りする。偶然を装いビオレタと出会ったエルマーは、彼女の背後から毒を構えるが、振り向いたビオレタに突然キスをされ、計画は失敗に終わる。

2. 種子発芽

ビオレタとの距離を縮めていく中で、エルマーは想定外の殺人に手を染めることに。一方で、初めて知る感情と、自分に下されたある診断に心を動かされたエルマーは、母の命令に逆らおうとする。

ビオレタを殺害する計画に失敗したエルマーは、森の中で彼女と時間を過ごすうちに恋に落ちる。冷徹な殺し屋としての自分からは想像もできなかった感情が、彼の心に芽生え始めていた。

ビオレタに誘われ、居酒屋で食事をしている二人の前に、ビオレタの知り合いであるモンという男性が現れる。モンは、ビオレタが元恋人ソアンを殺したと非難する。モンの態度に初めて「怒り」という感情を抱いたエルマーは、その制御方法を知らないまま、ビオレタと別れた後にモンを追い詰め、衝動的に命を奪ってしまう。

しかし、怒りに身を任せたエルマーの行動は、致命的なミスを生む。殺害現場に園芸用の部品を落としてしまったのだ。モンを車で運び帰宅したエルマーは、母チナにすべてを告げる。エルマーの感情が戻ったことを喜ぶチナだったが、モンを殺害した理由を聞き、彼の未熟な行動を厳しく責める。そんな中、エルマーは突然体調を崩して倒れ、病院に搬送される。

病院ではMRI検査により、前頭葉に腫瘍が発見される。医師から手術を勧められるが、それは再び感情を失う可能性を伴うものであった。エルマーはビオレタを守りたい一心で、母チナに依頼を断るよう懇願する。だがチナは、「ビオレタに会わず、治療を受ける」という条件を突きつけ、エルマーを悩ませる。

一方、モンの失踪事件を追う刑事トーレスとカレラは、現場でエルマーが落とした園芸用の部品を発見。さらに、モンが最後に会った人物としてビオレタに話を聞く過程で、エルマーとチナの存在が浮上する。

その頃、パーティーへの招待を受けたエルマーは、母との約束を守り誘いを断るものの、彼の心はビオレタへの想いに引き寄せられていた。葛藤の末、エルマーはチナとの約束を破り、治療を拒否してビオレタの元へと向かうのだった。

3. 有機基質

チナは、エルマーの代わりに仕事を遂行しようと考える。ある行方不明者の捜索は、ビオレタの過去と直近のパートナーに関する疑問を呼び起こす。

時は遡り、数年前。チナの元恋人トニーが突然現れ、数日間滞在するだけと約束しながら、チナとエルマーの家に居座るようになる。彼の存在は二人の生活を混乱させ、口論が絶えない日々が続いた。耐えきれなくなったエルマーは、自ら調合した毒を使いトニーを殺害する。

そして現在、ビオレタを殺せないエルマーに業を煮やしたチナは、自ら変装して彼女に近づく。しかし計画は失敗に終わり、エルマーに治療薬を料理に混ぜて食べさせる方法で彼を制御しようと試みる。

一方、刑事トーレスとカレラは、失踪事件に共通点があると推測し、過去の行方不明者の資料を徹底的に洗い直す。そして失踪者の一人の最終目撃地点から、犯人がスライドドアの車を使用している可能性を突き止める。彼らの捜査は徐々にエルマーに迫りつつあった。

その頃、ビオレタとのデートを重ねるエルマーは、自分の中で感情が再び薄れていることに気付き始める。違和感を覚えた彼は、母チナを問い詰め、治療薬が料理に混ぜられていたことを知る。

4. ペストコントロール

トーレスとカレラは、助言を求めてある大学教授のもとを訪ねる。一緒にいたいとビオレタに迫るエルマー。一方で、母との関係はぎくしゃくしていく。

エルマーはビオレタをデートに誘うが、彼女から用事があると言われ断られる。ビオレタに夢中のエルマーは、ビオレタが引率する幼稚園の遠足先に姿を現すが、突如現れた彼の行動にビオレタは困惑する。

一方、刑事トーレスとカレラは、過去の失踪事件に類似点があることから連続殺人犯の可能性を疑うが、専門家の大学教授の見解はそれを否定する。そこで彼らは、依頼を受けた殺し屋による犯行の線で捜査を進めることを決める。

ビオレタの友人カトゥシャは、出会ったばかりのエルマーとデートを重ねる彼女の行動を非難し、二人は口論になる。翌日、カトゥシャは言い過ぎたことを謝るためビオレタに会おうと約束し、ビオレタは犬のミルキーを連れて出かける。ビオレタを見かけたサベラは彼女の後をつけ、ミルキーを連れ去る。ミルキーがいなくなっていることに気付いたビオレタはすぐにサベラの仕業だと察し、彼女の家を訪れる。そこでサベラに過去を問い詰められるビオレタは、元恋人ソアンの死について語り、彼が橋から転落したのは事故だったと説明する。ビオレタはミルキーを返してもらい帰宅する。しかし、実際にはソアンの転落は事故ではなく、彼はビオレタに突き落とされて命を落としていたのだった。

エルマーはビオレタに避けられていると感じ、彼女に会いに行くが冷たくあしらわれてしまう。そんな中、サベラはチナに「あと2週間以内にビオレタを殺害しないなら、秘密をバラす」と脅迫する。

また、刑事カレラは失踪した水泳選手アントンの捜索が打ち切られたことをアントンの妻に伝える。その後、妻の様子に違和感を抱いたカレラは彼女を尾行し、チナの園芸店に入る姿を目撃する。そこでカレラは、失踪者たちと園芸店に何らかの繋がりがあると直感し、モンの失踪現場で拾った部品が園芸用品であることなどから、チナとエルマーが殺し屋であるとの推測にたどり着く。

その頃、チナにビオレタとの関係について質問されたエルマーは、ビオレタが落ち込んでいるだけだと答える。しかし、チナはSNSのライブ映像を示し、ビオレタがクラブで遊んでいる姿をエルマーに見せる。それを見たエルマーはいてもたってもいられず、ビオレタの家の近くまで向かう。そこで彼女が男性と一緒に家に入っていく姿を目撃してしまう。

5. 死体分解

ビオレタと口論になり、任務の再開を検討するエルマー。トーレスとカレラは、最重要容疑者のものと思われる居場所を調べる。

初めて失恋を経験したエルマーは、愛の苦痛を知り、「二度とあんな思いはしたくない」と母チナに治療を再開する意志を伝える。その頃、刑事トーレスとカレラはエルマーに目を付け、2018年に失踪したトニーが犠牲者の一人である可能性を推測する。

一方、ビオレタは自分の態度を謝りたいとエルマーに電話をかける。エルマーはビオレタを殺害する準備を整え、彼女に会いに向かうが、トーレスとカレラが彼を尾行していた。ビオレタはエルマーに弁解し、最初は「君を信じられない」と言っていたエルマーだが、彼女の話に心を揺れ動かされる。そしてビオレタの家で二人は愛を確かめるように体を重ね合わせる。

エルマーが再びビオレタの殺害に失敗したことを悟ったチナは、旧友オーソンを呼び、ビオレタの殺害を依頼する。帰宅したエルマーはチナにビオレタを愛していると告げるが、チナは依頼主サベラに「ビオレタを殺さなければ通報する」と脅されていることを明かす。エルマーは「チナは自分を愛しているのではなく操りたいだけだ」と言い放ち、ビオレタに手を出すなと警告して家を出る。そしてエルマーはビオレタの元へ向かう。

トーレスとカレラはエルマーの次の標的がビオレタであると確信し、彼女の家の前で張り込みを開始する。エルマーはビオレタに「少し用事がある」と伝え家を出る。その直後、トーレスとカレラは張り込みをしているところをエルマーに目撃されてしまう。これ以上の捜査は危険だと考えるトーレスは殺人課へ引き継ぐことを提案するが、手柄を奪われたくないカレラは自分たちで捕まえると躍起になる。

エルマーが向かった先はサベラの家だった。サベラの家の近くを歩いているエルマーをビオレタの友人カトゥシャが目撃し、ビオレタに留守電を残す。

カレラはエルマーが庭師であることから、死体を庭園に埋めたと推測。喫煙者の死体を養分とした植物に赤外線を当てると青い斑点が現れることを知る。カレラはトーレスと一緒に庭園に向かおうとするが、令状もなく夜であったためトーレスはカレラにやめるよう伝える。

サベラの家に忍び込んだエルマーは、サベラに見つかる。サベラはナイフでエルマーを切りつけ、その隙に逃げようとするが、逆にエルマーに腹を刺され殺されてしまう。ビオレタの家に戻ったエルマーは、「アカシアのトゲで切った」と言い、サベラに切りつけられた傷の手当を頼む。

その頃、カレラは一人で庭園に忍び込み、紫外線を当てて写真を撮影。その写真には、植物の葉に青い斑点が写っていた。

6. せん定カレンダー

ビオレタとエルマーは、共に現実を直視することを余儀なくされる。チナは息子に逃げ道を与えるが、果たしてエルマーは、母親が警察から証拠を隠し通すと信じることができるのか。

翌日、エルマーは「出かける」と言い残し、ビオレタの家を後にする。カトゥシャからの伝言を聞いたビオレタは、昨晩エルマーが脱いだ服の中にサベラのイヤリングが紛れているのを発見する。さらに、ネットでサベラが殺害されたニュースを目にしたビオレタは、エルマーが犯人であることを確信する。

ビオレタは急いで荷物をまとめ、ミルキーを連れて車を走らせるが、その後をオーソンがつけていた。一方、カレラは専門家に青い斑点が写った植物の写真を見せ、死体が埋まっている可能性が高いとの証言を得て、令状を申請する。

その頃、エルマーはサベラの家から盗んだ宝飾品をチナに報酬として渡す。一方、車を止めたビオレタはエルマーに電話をかけ、エルマーがサベラ殺害の犯人であることに気付いたと告げる。彼女は「自分にも責任がある」とし、エルマーが逃げるまで通報するのを待つと伝え電話を終えるが、その直後にオーソンに頭を殴られ連れ去られる。

人気のない森の中に連れてこられたビオレタは、オーソンの隙を見て隠れ、背後から石で殴りかかり彼を殺害する。オーソンのポケットからスマホを取り出したビオレタは、エルマーに電話で助けを求める。一方、チナはオーソンに電話をかけ、ビオレタの殺害が完了したか確認しようとするが、電話に出たのは彼のスマホを持っているビオレタだった。ビオレタはその電話で、自分を殺そうとした黒幕がチナであることを知る。

裁判所から令状が出たことを確認したトーレスとカレラは、チナの園芸店へ向かう。しかし、庭園の花々はすべて掘り起こされ、何も残っていなかった。チナはカレラが侵入し写真を撮影していたことを察知し、埋めていた遺体をすべて別の場所に移していたのだ。

エルマーはビオレタの元へ到着し、自分が殺し屋であること、そしてサベラからビオレタ殺害を依頼されていたことを明かす。二人はオーソンを事故死に見せかけるための偽装工作を行い、その後別れる。

チナの元へ帰ったエルマーは、サベラが死んだにも関わらずなぜビオレタを殺害しようとしたのかを問い詰める。チナは「エルマーを愛しているから、生きてほしいから」と答えるが、エルマーは「すべて金のためだ」と彼女の嘘を指摘し、家を去ろうとする。しかし、車に乗り込もうとした瞬間、チナに頭を殴られ気を失い病院へ運ばれる。腫瘍の摘出手術を受けたエルマーは、再び感情を失ってしまう。

ビオレタは「今までのつらいことを思い出してしまう」と言い、町を出ることを決意する。

そして後日
退院したエルマーは、庭の植物の世話をする日々に戻っていた。感情を失っても、彼は過去の出来事をすべて覚えていた。チナには、エルマーの目に恨みが宿っているように映り、それが時折恐怖を感じさせた。

そんなエルマーの元にビオレタが現れ、「頼みがある」と告げる。「消してほしい人がいる」と。

一方、カレラは海岸に打ち上げられた数々のビニール袋を発見。その中には白骨化した遺体が入っていた。

『ザ・ガーデナー』見どころと感想

主演アルバロ・リコが魅せるふたつの顔

アルバロ・リコが演じる主人公エルマーは、庭師として穏やかで静かな日常を送る一方、冷酷な殺し屋としての裏の顔を持つ複雑な人物です。彼が見せるこの「ふたつの顔」は、このドラマの最大の見どころのひとつです!

表の顔である庭師としてのエルマーは、丁寧に植物を育てる姿が印象的なんですよね。美しい庭園と自然への愛情を感じさせる穏やかな佇まいが、彼の人間的な魅力を引き立てています。でもその裏側では、冷徹に標的を狙い、抜かりなく計画的に命を奪う殺し屋として暗い闇を抱えています。この二面性は、物語の緊張感を高めると同時に、エルマーのキャラクターとしての魅力を十分に引き出しています。

アルバロ・リコは、感情を失った冷たい目から、ビオレタとの出会いをきっかけに少しずつ変化し始める内面的な葛藤までを見事に表現しています。感情を取り戻しつつある姿、そして再び感情を失う運命に直面する悲しげな演技は、本当に心を揺さぶられるものがあります。

このドラマにおけるアルバロ・リコの演技は、単なるキャラクターの表現にとどまらず、人間の内面の光と闇を鮮やかに描き出すものとなっており、エルマーというキャラクターの複雑さが皆さんをこの物語の中に引き込みます。

支配か愛か

チナの人間性とエルマーとの複雑な関係性は、この物語の中核をなす見どころの一つです。チナはエルマーへの愛を口にしつつ、その行動の背後には息子を操り支配しようとする強い執念が見え隠れします。

エルマーが感情を失った原因となった20年前の事故。その罪悪感(は抱えているのか疑問ですが)や息子への愛情が、彼女を殺し屋業に駆り立てる原動力となっています。一方で、冷徹な判断と行動を繰り返す彼女には、支配的な側面があり、エルマーの人生を完全にコントロールしようとする姿勢が際立ちます。メキシコの家を買い戻すという目的を掲げながらも、息子の人生を自由にさせることはありません。

感情を失い冷静だったエルマーがビオレタとの関わりで少しずつ変化し始めると、その変化に危機感を覚えたチナは、さらにエルマーを支配しようとします。チナの行動は、息子を守りたいという愛情と、彼を完全にコントロールしたいという欲望の間で揺れ動いています。彼女の支配的な行動は恐怖を与える一方で、母親としての「子どもを守りたい」という切実な思いが垣間見える瞬間もあり、親子愛について考えされられる部分もあります。

特に注目すべきは、二人の対立が徐々に激化する過程。エルマーの独立した感情が再び芽生えるにつれ、チナの支配への執着がエスカレートし、最終的には愛憎が入り混じった破滅的な関係に突き進んでいきます。

ネタバレ感想

個人的には最後の終わり方がすごく好きでした。エルマーは感情を再び失っているはずなのに、チナを恨んでいるような表情をしていて、「本当は感情があるんじゃないかな?」って表情が良かったです。

そしてチナがナレーションで「不測の事態に備えないといけない」って言った直後にビオレタが現れて、エルマーに殺しを依頼するシーン。あの含みを持たせた終わり方が、いろんな想像を掻き立ててくれます。ビオレタが依頼したのって、たぶんチナの殺害なんじゃないかなーっと。そして「誰?」って聞いたエルマーも、実はビオレタが誰を殺してほしいのか分かってるような表情をしてましたよね。

考えてみれば、チナはビオレタを殺そうとしたし、ビオレタはチナの秘密を知っているわけだから、いつ命を狙われるか分からない状況ですよね。この緊張感が最後まで続いていて、余韻を残す良い終わり方だったと思います。

そしてちょっと話が変わりますが、この作品全体を通して、見ていて気になったことというか、少し理解が難しいと感じた点があります。それは、エルマーが物語の中で「感情を取り戻し、また感情を失う」という重要な展開です。でもそもそも、「感情がない」という状態がどういうことなのか、作中でそこまで詳しく掘り下げられていなかったので、見ながらずっと気になってしまいました。

作中では「幸せや愛情、恐怖や罪悪感を感じない」と説明されています。つまり、いわゆる喜怒哀楽がないというのは分かりやすい表現ではあります。でも、人間の行動の目的を突き詰めると、そこには感情が必ずあるわけで、その「感情がない」というのはどういう状態なのかが曖昧でした。例えば、チナは殺し屋業をしている理由として、メキシコの家を買い戻し、エルマーと幸せに暮らしたいという感情が根底にあります。でも、エルマーの場合、その目的がどこから来ているのかが明確に描かれていないように思いました。

ロボットと同じと考えれば分かりやすいのかとも思いましたが、それともまた違うんですよね。エルマーには意思があり、五感があり、生理的な欲求はあるはずです。そしてこれらは感情と密接につながっているものなので、「感情」と切り離して考えるのが難しいと感じました。たとえば、「お腹がすいたらご飯を食べたい」というのは生理的な欲求ですが、「ご飯を食べて美味しいと感じる」のは味覚があるからですよね。そして「美味しいご飯が食べたい」と思うのは、「美味しいご飯で幸せになりたい」という感情に基づくものだと思います。この「感情がない」という概念をもっと丁寧に掘り下げてもらえたら、エルマーの心理や、感情を取り戻すことの意味について、より深く物語を楽しめたのではないかなと思いました。

『ザ・ガーデナー』まとめ

『ザ・ガーデナー』は、庭師と殺し屋という二重生活を送るエルマーを通じて、人間の「感情」と「行動」の本質を探る作品です。感情を持たないエルマーが、ビオレタとの関わりを通じて少しずつ変化し、再び感情を失う運命に直面する。この過程には彼の葛藤や、感情が人間に与える影響の深さが描かれています。

『ザ・ガーデナー』はNetflixで配信中です。みなさんも一度チェックしてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました!

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